「バカとは仕事にならない」

高原かおりは続ける。

「会社HPのリニューアルをどうやって進めていくか、話していたんですが、松沢さん、まずKPIを決めなきゃいけないっていい出したんです」

「KPI?」

「要するに、会社の売り上げを増やしたいのか、HPのPVを増やしたいのか、最初にはっきりさせてほしいって言われたんです。それによって、どういうサイトにするか変わってくるからって」

「なるほど、確かに。さすが元外資系コンサルだな」

的場は素直に納得した。松沢を紹介してくれたのは、的場が長年お世話になっている、別の会社の社長だった。何でも、元有名外資系企業の社員だったとかで、大変優秀な人材だという触れ込みだった。どうやらその肩書や経歴に間違いはなさそうだった。

ただ、高原はまだ何か言いたいことがあるようだった。

「その点は問題ないんです。問題はその後でして……」

「その後?」

的場がたずねると、高原かおりは横にいる米倉専務を見た。

「実はその時、米倉さんが言ったことが、松沢さんの気に障ったみたいで……」

「何か言ったのかね?」

的場が聞くと、米倉が言いにくそうに言った。

「ええ。大したことじゃないんですが、私、恥ずかしながらPVという言葉の意味を知らなくて、つい聞いちゃったんです。PVって何ですかって。そうすると……」

米倉が口ごもると、高原かおりが後の説明を引き取った。

「そうしたら、松沢さん、米倉さんに向かって急に怒鳴り散らしたんです。『そんなことは基本中の基本だ。PVの意味すら知らないバカとは仕事にならない』って。もう手が付けられないくらい怒っちゃったんです」

●元外資系コンサルはなぜ激怒したのでしょうか。後編:【「PVなんて難しい言葉を使うんじゃねえ!」元外資系のITコンサルが受けた「許容しがたい暴言」の中身】にて詳細をお届けします。

 

※複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。