<前編のあらすじ>

パワハラが原因でアニメーターの夢を諦め、事務職として働く早和子。帰宅後にSNSで流れてきた生成AI動画の広告をきっかけに、気まぐれで短い動画を投稿したところ、予想外のバズが起きる。

再生数やコメントの反応に高揚した早和子は、帰宅後の動画投稿を日課にするようになる。やがてSNSの収益欄に金額が表示されたことで、投稿への熱はさらに加速していった。

しかし、より多くの反応を得るために投稿内容は次第に攻撃的になり、批判コメントも目立ち始める。早和子は否定的な声をブロックし、過激な方向へさらにのめり込んでいった。

●前編【「こんなのでいいんだ」気まぐれで投稿したAI生成動画が30代女性の生活を一変させるまで

満たされない承認欲求

朝、アラーム音で目を覚ました早和子は、真っ先にSNSを開いた。

昨夜投稿した動画の反応をチェックする。再生数は悪くないが、伸び方は一昨日の動画より鈍い。通知を素早く目で追いながら、早和子はわずかに眉を寄せた。

「昨日のは、ちょっと弱かったか」

寝起きのかすれた声が部屋に響く。少し前なら十分だと思えた数字でも、今はもう足りなかった。もっと早く、もっと多くの反応が返ってこなければ、気持ちが落ち着かない。

「おはようございます」

出勤してからも、仕事に身が入らなかった。請求書の確認をしながらも、頭のどこかでは次の題材を探している。昼前、後輩が伝票を持ってきたときも、早和子は一拍遅れて顔を上げた。

「水谷さん、これ先方に送っておきます?」

「……あ、お願いします」

「珍しいですね。今日ちょっとぼんやりしてません?」

「ちょっと寝不足なだけだから」

大丈夫、と答えながら、早和子は自分でも少し参っているのを認めざるを得なかった。昨夜も動画を1本上げたあと、コメント欄を見続けて寝るのが遅くなってしまった。肯定的な反応は相変わらず多い。しかし最近は、「悪意がある」「笑えない」「やりすぎ」といった反応も目につくようになっている。そうした言葉に触れるたび、早和子はかえって神経が研ぎ澄まされていくのを感じていた。