過激さを増す投稿内容
「今日の動画はどうしようかな」
帰宅すると、早和子はバッグを床に置き、そのまますぐにスマホを開いた。トレンド欄には、政治家の失言騒ぎと芸能人の熱愛報道が並んでいる。どちらも、今最も世間が注目している話題だった。
「どうせ、みんなこういうのが好きなんでしょ」
政治家の顔をわざと大げさな表情に変え、失言を誇張したセリフを付ける。芸能人の動画には、本人が言ってもいない下品な一言を重ねる。生成された映像は細部こそ粗いが、流し見するには十分それらしく見えた。完成した動画を見返しながら、早和子は口元を緩めた。
「バカみたい。でも、こういうのが回るんだよね」
投稿後の反応は早かった。数分もしないうちに通知がまとめて増え、コメント欄が勢いよく流れていく。
「攻めてて好き」
「待ってた」
「この人、最近キレてるな」
その一方で、通報をにおわせる声も混じっていた。
「さすがにまずいでしょ」
「本人じゃなくても、こういうのはだめ」
「消したほうがいいと思う」
早和子はそれを見て、鼻で笑った。
「善人ぶってるだけじゃない」
誰に聞かせるでもなくそう言って、批判の文はすぐに閉じる。代わりに、面白がっている反応だけを拾っていく。
数字はさらに伸びていた。胸の奥に、冷たく乾いた高揚が広がっていく。自分はもう、どこにでもいるただの会社員ではない。大勢が自分の投稿を見て、反応し、拡散している。
「よし、次もこの調子でいこう」
通知音がまた鳴る。早和子は間を置かず、2本目の投稿画面を開いた。
