未納金額はまさかの200万円超え…
案の定、役員になって最初の理事会で、管理会社の担当者から津島さんの管理費未納に関する経緯が説明されました。津島さんの居室はマンションの中で一番広いため管理費も修繕積立金も最も高く、その時点で未納の金額はゆうに200万円を超えていました。
管理会社の担当者いわく、世帯数の少ない小規模マンションだからこそ未払いの影響は甚大で、既に管理費は自転車操業状態となっていて、修繕積立金不足は将来の大規模修繕に支障を来す可能性が大きいとのことでした。
一方で、津島さんサイドも複雑な事情を抱えていました。
津島さんの居室の事実上のオーナーは近隣に住む奥さんの実兄です。津島さんのご主人は飲食店を経営していたのですが腰を悪くして仕事を続けられなくなり、やむなく店を畳みました。その結果、自宅の家賃を払うのも厳しい状態となり、奥さんが実家の母親に泣きついて新しく建つこのマンションに住むことになったのでした。その部屋には当初、姪(兄の娘)一家が入居する予定だったそうです。
津島夫婦の言い分は、「私たちは年金もほとんどもらえないし、暮らしていくのが精いっぱい。そもそも、この部屋は兄の持ち物なんだから、兄が管理費や修繕積立金を払うのが筋じゃないですか」というものです。それを聞いた津島さんのお兄さんは「どこまで図々しいんだ。家賃も取らずに住まわせてやっているんだから、管理費くらいは自分で払え」と怒り心頭だったと言います。
津島さんと実兄はもともと仲が良くなかったらしく、大変な思いをしたのは両者の間に立った管理会社の担当者でした。とても支払いについて協議をするとか、滞納を認める債務承認書にサインをもらえるような雰囲気ではなかったそうです。
そうした経緯もあり、歴代の理事会の役員はこの問題に“見て見ぬふり”を決め込んだのでした。しかし、私たちの代にはそれでは済ませられない事情がありました。管理費未納には5年の時効があります。このまま未納の状態を放置しておくと、時効消滅によって回収できない管理費が出てきてしまうのです。
管理会社の担当者から時効に関する説明を聞き、抗議の声を上げたのは私のママ友の中村さんでした。
「どうして4年以上も放置してきたんですか? すぐに訴えるべきです!」
●時効が迫る津島さんの管理費未納問題……。気になる結末は、後編【絶対的な権力に歯向かったらどうなるか…マンション管理組合の役員を務めた30代女性が戦慄を覚えた「ムラ社会の呪縛」】で詳説します。
※個人が特定されないよう事例を一部変更、再構成しています。