怒りの視線を向けてくる母親
翌朝、いつものように登校した明日香が1時間目の授業の準備をしていると、教頭がやってきた。
「高梨先生」
と、明日香を呼ぶ表情は険しい。
「ちょっといいかな。山下さんの親御さんが訪ねてきてるんだけど」
「えっ」
もちろん思い出したのは昨日のハロウィーンパーティーのことだった。やはり、悠里は学校に衣装やお菓子を持ってきていて、それを誰かに隠されたり、取られたりしたのだろうか。もしそうなら、担任として厳しく対応しなければならない。
「今、来賓室で待ってもらってるから、すぐに来てもらえるかな」
「分かりました」
明日香は作業の手を止めて立ち上がり、教頭の後ろに続く。
しかし校長室の隣りにある来賓室に入った明日香を出迎えたのは、親子参観と家庭訪問で2度ほど面識がある悠里の母親の厳しい怒りの視線だった。
●母親のいきなりの登場にひるむ明日香。悠里の母親が学校に出向いてまで「言いたかったこと」とは? 後編【無神経なハロウィンパーティの後、涙して、親子で分け合った「一枚のクッキー」】にて、詳細をお届けします。
※複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。