夫婦の貯金が減っていた
銀座でお茶をするんだと、いつものように佐枝がめかしこんで外出していった午後、みどりの使っていたパソコンが前触れなく壊れた。真っ白になった画面がうんともすんとも言わなくなり、電源ボタンすら効かなくなった。
仕方がないので昔使っていたPCを引っ張り出して起動する。セットアップをして作業を始めるが、スペックが落ちる古いPCでの作業ははかどらない。突然壊れたPCも相変わらずデスクの端でホワイトアウトした画面をさらし続けている。幸い、納期の差し迫った仕事はないが、不便極まりないので新しいPCを急ぎで買う必要があるだろう。
しかしみどりの仕事に堪えうるような高スペックのデザイナーPCの値段はだいたい20万円前後。もちろん出せない金額ではないが、予定外にたやすく出せるような金額でもなかった。みどりはスマホを手に取った。祐也と2人でためていた貯金から出すならば、家計への支障は限りなくゼロに近い。彼が帰ってきたら相談しようと思い、みどりはひとまず今いくらくらいたまっているのかを確認しようと、銀行のアプリを開く。
「は?」
思わず低い声が口を突いて出たのは、表示された金額に面を食らったから。2人でこつこつため、150万円くらいはあったはずの貯金は、たった10万円ほどに減っていた。
●夫婦の貯金の行方は……? とんでもない事実がみどりに襲い掛かる。後編【「ケチくさいこと言うなよ」消えた夫婦の貯金の行方は…義実家で発覚した「マザコン夫の本性」】にて、詳細をお届けします。
※複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。