息子までも交通事故に…
それから、孝とはろくに話せないまま1週間がたった。孝は相変わらずバイトざんまいで帰りは遅い。3回に1回くらいは連絡も返ってくるようになったが、文面はいつも素っ気ない事務連絡だ。里奈は仕事終わりにスーパーで買い物をし、車に乗り込む。家に帰ろうとエンジンをかけようとしたとき、かばんに入れていたスマホが震えた。職場からだと嫌だなと思いながら取り出すと、見ず知らずの番号からだった。
「……もしもし」
「下条里奈さんでよろしかったですか?」
電話の相手は女性だった。
「ええ、はい。下条ですが、どちらさまですか……?」
「○○大学病院、救命救急センターの吉川です」
「え……⁉」
思わず携帯を落としそうになった。
「今すぐ病院に来てください。下条孝さんが交通事故に遭われて……」
続く言葉はうまく聞き取れなかった。交通事故と言われた瞬間、里奈の頭は真っ白になっていた。
●夫に続き息子までもが交通事故に……。孝の容体は? 後編【「これ以上、母さんに迷惑をかけられない」交通事故で夫を亡くし…シンママが思わぬ事から知った「切なすぎる息子の本音」】にて、詳細をお届けします。
※複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。