正確な住所に内容証明を送ることに

遠藤さんの返済が滞り始めてから半年ほど経過したとき、米原さんが動いた。遠藤さんの住所に宛てて内容証明郵便を送付する決断をしたのだ。

内容証明郵便とは、いつ、誰が、誰に宛てて、どのような内容の文章を送ったかを郵便局が証明してくれる文書だ。送付方法も本人へ直接手渡しする形で行われるものであるため文書による威圧感も十二分に発揮される。

とはいえ、記載した内容が事実とまでされるわけではないため、公正証書のようにこれ単体で差し押さえが可能になるほどの証拠力等は有さない点には注意が必要だ。

だが、一般的な法的知識である人に対して「まずい」という焦燥感を与えることは可能である。しかし、これも住所が分からなければ意味がない。内容証明郵便はあくまでも郵便物の一種。住所の分からない相手には届けようがない。

世の中、内容証明郵便を送りたいが相手の住所が分からない、または相手の住所が虚偽の内容であってどうしようもなかったということは少なくない。また黙って引っ越しをしてしまい現在は住所地が異なるということもままある。

その点、公正証書であれば身分証で住所確認をするので、確実に現住所を知ることができるようになっているし、相手が虚偽の住所地を伝えてくるということは少ない。加えて、公正証書内で住所の変更について通知義務を定めておけば黙って住所変更がされていたということもない。

そしてその日は訪れた。米原さんは私へ内容証明郵便の作成について依頼をしに来たのだ。実に返済が滞ってから7カ月を経過した頃だ。遠藤さん宛てに内容証明郵便は無事到達し、本人の受取が確認された。