気合が入りすぎてしまった
集合場所へ集まっていたのは、予想していた通り父親ばかりだった。保護者参加なのでどちらの親が参加してもいいのだが、走る競技のせいか男親が多かった。
「……よし」
康子はさらに気合を入れる。女だからってなめられてたまるか。ママはパパたちにも負けていないんだと、李菜に思ってもらいたかった。
康子が決意を固めていると、最新のヒット曲が流れ始める。入場した康子は第1走者として出場する。1列に並び、ピストルの音を待つ。大きく鳴ったピストルに合わせて康子は飛び出す。単純な走力では若い父親にはかなわないから、平均台やぐるぐるバットなどの障害物をスムーズにこなしてタイムを短縮していく。康子は最後の障害物を終えて、トップを走っていた。
大きな歓声が聞こえた。その歓声の中に李菜の声がある。そう思うと、さらに力が入った。
最後のカーブに差し掛かる。このカーブを抜ければ次の走者が待っている。
決死の覚悟で走っていると、すぐ後ろに若い父親が追いついてくる。抜かれるわけにはいかない――そう思った瞬間に、足がもつれて、康子の天地はひっくり返った。
●気合が入りすぎて思わず転倒してしまった康子。怪我は大丈夫だろうか……? 後編【浮気した元夫を見返してやりたい…泣きじゃくる娘に教えられた「1番大事なこと」】にて、詳細をお届けします。
※複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。