窓から漏れるわずかな明かりの中、康子はゆっくりと起き上がる。普段の起床時間よりも1時間早い。隣では娘の李菜がかわいらしい寝息を立てていた。李菜を起こさないように、寝室のドアを閉めて、台所に向かった。

毎朝、李菜のために朝食と弁当を作っているのだが、今日はいつもとは違う。冷蔵庫を開けると、前日につけておいた鶏肉がある。李菜の大好きな唐揚げを入れるのだ。鶏肉を取り出して、巻いてあったラップをめくると、大きなあくびが出てきた。睡魔はあるが、気持ちはとても高揚している。リビングの壁にはカレンダーが貼ってあり、本日9月24日には花丸の印があり、その下には運動会と記してあった。

今日、康子は保育園の運動会に参加する。昨年は残念ながら、仕事の都合で参加できず、近所に住む両親に代わりをお願いしていた。親としては参加するのが当然だと思っている。しかし、母子家庭であるわが家にとっては、仕事を重視しなければならない事情があった。

李菜は内向的だし、少し大人びたところがあるので、あまり自分の感情を爆発させることはない。去年の運動会だって、楽しかったとうれしそうに語っていた。だが、自分がもし李菜の立場だったら、寂しかったと思う。だからこそ、今年こそはしっかりと参加できるように早めに休みを取っておいた。

李菜が運動会で活躍している姿を想像しながら弁当を作った。作り終えた頃に、李菜を起こし、身支度をさせる。グズることもあるのだが、今日はうれしそうに保育園の制服に着替えてくれた。李菜も楽しみにしているということが、表情を見ているだけでよく伝わった。