娘に気付かされた自分自身の悪い癖
それから2カ月後ほどして、司法書士事務所を経由し500万円が私の口座に振り込まれました。兄からは何の音沙汰もありません。今思えば、疎遠な私に連絡をよこしたのは、500万円を自分のものにする言質を取るのが目的だったのでしょう。
兄には私が母の遺産など受け取らないだろうという勝算があったのでしょうが、あの手紙のせいでまんまと目論見が外れてしまったのです。
同居する未来にも今回の経緯は伝えました。
すると未来が「おばあちゃんは不器用だけど一本芯が通った人だったんだね。生きてるうちにリアルおばあちゃんに会いたかったな」と残念がるので、「そう? コミュ障だし、頑固で融通が利かない人って感じだけど」と言うと、「それってお母さんのことじゃん!」と返されました。
これには驚きました。
その時に初めて聞かされたのですが、未来は私が離婚して以来、「世間知らずのくせに意固地で孤立しがちなお母さんを放っておけない」という希のたっての願いで私を見守ってきたのだそうです。知らぬは私ばかりだったのです。
意見が対立した時、相手の言葉に聞く耳を持たず、自分を押し通そうとするのは私の悪い癖です。「頑固で融通が利かない母や娘」はそんな自分の姿の投影だったのかもしれません。
母と言い、前夫と言い、家族に恵まれない人生と諦めていましたが、この年になってそうでもなかったことが分かりました。母にはもう親孝行できないので、残りの人生、子どもたちとの絆を大切に生きていきたいと思っています。
※個人が特定されないよう事例を一部変更、再構成しています。