これからの人生、ひとりで? それともふたりで?

まずは満子さんの本音です。平均寿命で考えるとあと30年。これからの人生をひとりで自由気ままに過ごしたいのでしょうか。それとも充彦さんと一緒に生きていたいのでしょうか。

満子さんの想いは、「できれば、また仲良く暮らしたい」でした。「でも、私が転勤先から逃げ出しちゃったから、こんな状況になってしまったのも仕方ないわね」とあきらめ顔。であればと、筆者から2つの提案をしました。

まずは、充彦さんと向き合って心の内を聞くこと。「お帰り」の返事が「ただいま」ではなく、「こんにちは」だった理由が分かれば、解決の糸口が見つかるかもしれません。もう1つは、話をするきっかけを作ること。たとえば、一緒にできる趣味を持ったり、動物を飼って一緒に世話をしたりすることで、自然に会話ができるようになるかもしれません。

筆者自身も夫とのコミュニケーションは、もっぱらゴルフ。お互い仕事で忙しく普段はあまり話しませんが、一緒にゴルフに行ったりゴルフツアーを観戦したりしながら、夫婦の絆を細々とつないでいます。

しばらくして満子さんから、「離婚について考えることを、先延ばしにする」と連絡がありました。勇気を出して充彦さんと向き合った結果、誤解が解けたのだそうです。

充彦さんが「ただいま」ではなく、「こんにちは」と言ったのは、京都の家は満子さんの母の援助で建てた家で、自分の家だとは思えなかったからでした。また、役職定年後は関連会社に転籍になり、慣れない仕事でストレスが溜まっていたようです。それもあって毎日のように飲みに行っていたことが分かりました。充彦さんもまた、自分の居場所を見つけられず、孤独を感じていたのでした。

充彦さんとのコミュニケーションを経て、自分のことばかり考えて、夫の気持ちを理解してこなかったことを反省した満子さん。充彦さんが子どものころ犬を飼っていたと聞き、次の休みに一緒に保護犬を見に行くことに決めたそうです。

20年もの月日は簡単には取り戻せません。変に期待せず、少しずつ歩み寄ることで、再び心を通わせることができるのではないでしょうか。

※プライバシー保護のため、内容を一部脚色しています。