<前編のあらすじ>
相談者の満子さん(仮名・53歳)は28年前に2歳年上の充彦さん(仮名)と結婚し、勤めていた会社を退職しました。結婚後は、充彦さんの転勤に伴い満子さんも各地を転々とする生活。最初こそ旅行気分で楽しめたものの、しばらくたつと「今日は何して過ごそう……」と朝からため息をつく日が増えました。
そこで考えたのが働くこと。しかし転勤族がゆえに就職活動が難航し、パート勤務で働き始めます。ただ、子どものいない満子さんはパート仲間の輪に入れず、ここでも強く孤独を感じるようになります。
家でも職場でも居場所を見つけられない満子さんでしたが、そんな状況が一変する出来事が起こります。満子さんの母親が脳梗塞で倒れたのです。これでようやく孤独から解放されると考えた満子さんは、母親の援助で京都の実家の近くに家を買い、治療とリハビリを支えることに決めました。
それと同時に、東北で勤務している充彦さんとは別居生活がスタート。だんだん疎遠になる夫婦関係でしたが、20年の月日がたち、役職定年を迎えた充彦さんが戻ってくることになりました。
●前編:【キャリア断絶、孤独、自己嫌悪…夫の転勤で “居場所”を作れなかった女性が見つけた「1つの希望」】
簡単に埋まらなかった夫婦の深い溝
20年ぶりに転勤生活を終えた充彦さんが帰宅しました。待ちに待った帰宅のはずなのに、満子さんが「お帰り」と声をかけると、返事は「ただいま」ではなく、「こんにちは」。
まるで他人のようだと感じショックを受けた満子さんでしたが、すぐに以前の夫婦関係に戻れるはずだと信じることにしました。
ところが、再び一緒に暮らし始めて2カ月たっても充彦さんのよそよそしさは続きます。会話は次第に減り、重苦しい沈黙が日常となっていきました。