誕生日プレゼント

それから数か月後。

息子の武治が孫の祥太を連れて、2人で実家に遊びに来ていた。祥太は少し見ないうちに、おぼつかない足取りながら歩けるようになっている。本当に子供の成長は早いものだ。

梨奈はというと、今日は友人たちと遊びに出掛けているらしい。相変わらず子供を置いて遊び歩いているのかとあきれる早月だったが、よくよく話を聞くとそうではないということが分かった。

武治の話によると、梨奈は祥太の転落事故があってからというもの、家事に育児に奮闘してくれているという。なんでも早月に諭された件で仲の良い友人グループに愚痴をこぼしたところ、ほぼ全員から梨奈にも非があると責められてしまったそうだ。

当然自分の味方をしてもらえると思っていた梨奈は、大きなショックを受けたが、同時に自らの行いを省みるきっかけにもなったらしい。親しい友人から指摘してもらったことで、ようやく梨奈は今まで自分が早月に頼り過ぎていたということに気付いたのだ。

それからの梨奈は、友人との外食やネイルなどもほどほどに、祥太と過ごすために時間を費やしているそうで、今日はたまたま武治が休みだったため友人と遊びに行っているが、祥太を置いての外出はずいぶん久しぶりだという。

早月は武治の話を聞いて、自然と温かい気持ちになった。梨奈が母親として頑張ってくれているようになったことが、とてもうれしかったのだ。

そこで早月は、息子の武治に伝言を頼むことにした。

「武治。帰ったら梨奈さんに伝えて。困ったときはお互いさまなんだから頼ってねって」

「ありがとう、伝えておくよ」

「それと、あんたもちゃんとするのよ。仕事にかまけて梨奈さんばっかりに頼ったらダメよ。2人の子供なんだから」

「……分かってるよ」

罰悪そうに髪をかいた武治をよそに、早月は今日のために用意していた小包を祥太に渡す。

「祥ちゃん、1歳のお誕生日おめでとう」

「あぁうう」

「よかったなぁ、祥太。パパと一緒に開けてみようか」

武治が手伝いながら包装紙を開けると、なかからはミニカーが出てくる。目を輝かせた祥太の反応を見て、早月はあらかじめ最近の祥太の様子を聞いておいてよかったとほっとする。

祥太はさっそくプレゼントの車を床の上で走らせている。早月は、思わず笑みをこぼして息子と孫に向かってポツリとつぶやいた。

「次は親子3人で遊びに来てね」

複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。