中村さんの司法書士としての“社会貢献”

聞けば、相続登記の義務化を背景に私のような依頼が増え、同様の案件を数件、同時進行で進めていたとのことでした。それを全く感じさせないプロフェッショナルな仕事ぶりに頭が下がりました。

謝礼も、思わず「これで利益が出るんですか」と尋ねてしまったほど良心的な額でした。事務所で資料や書類の控えなどを戻してもらった際、中村さんはこんなふうに話してくれました。

「空き家や所有者不明土地の問題が深刻化する中で、国が相続登記の義務化に踏み切ったのは、今これをやっておかないと将来大変なことになるという危機感の表れだと思います。幸い、相続登記は私たちが資格や経験を通して皆さんのお役に立てる分野です。ご依頼主のご事情に寄り添いながら1件ごとに丁寧な対応を心掛け、所有者不明土地を少しでも減らせるように社会に貢献していかなければならない。今、私たちにはそうした覚悟が求められているんです」

なるほど、意識の高さからしてスーパーなんだなと腹落ちした次第です。

何度かやり取りをする中で中村さんが日本酒好きで酒器のコレクターだと知ったので、幼なじみの陶芸施設が完成した暁には、ぜひ中村さんを誘って訪ねてみたいと考えています。中村さんが骨を折って登記をしてくれた空き家が、立派に生まれ変わって世の中の役に立っている様子をぜひとも見てもらいたいのです。

※個人が特定されないよう事例を一部変更、再構成しています。