「スーパー司法書士」と呼ばれる理由

30代前半の中村さんは、父親の経営する司法書士事務所で主に新規の顧客を担当している2代目でした。名刺交換の際は、失礼ながら意外に普通の人だなという印象を持ちました。中肉中背で取り立てて特徴のない容貌が、スーパー司法書士というネーミングとミスマッチだと感じたのです。

しかし、ヒアリングが始まるとすぐに「スーパー」の意味が分かった気がしました。私が用意した書類や資料を瞬く間に確認し、それに対して的を射た指摘や質問を繰り出してきたからです。その後の手際の良さにも驚かされました。

3週間後に事務所を訪れた際には、曾祖父から始まる家系図が用意されていました。わが家の戸籍を集めて作成したのだそうです。「相続のお手伝いをさせていただく時によく使うんですよ」と事もなさげでしたが、相続人の名前や連絡先まで一覧表にしてありました。

存命の相続人は21人。中には連絡先が空欄の人もいました。「どうしても難しかったら提携先の調査会社を使いますが、なるべく私が調べてみます」とのことでした。

相続人探しと並行して連絡先の判明している相続人と連絡を取り、実家を私名義に変更することに同意を得ていくという話でした。実家の家屋は未登記だったため、そちらも合わせて代々の遺産分割協議書を作成し、登記に向けた準備を進めることになりました。

とはいえ、本当に大変なのはそれからでした。中村さんの司法書士ネットワークを通じた地道な調査で幸いにも相続人全員の連絡先は判明したのですが、中には相続人から代償を求められたり、相続人が認知症で成年後見人とのやり取りを余儀なくされ話し合いが難航したりするケースもありました。

私自身、いくらスーパー司法書士とは言え、これはきついだろうと思いました。しかし、中村さんはそれから数カ月で相続人全員の了承を取り付け、実家の土地と家屋の名義変更の手続きまで済ませてくれたのです。