毎月の分配金が非課税にならない理不尽

先日も、資産のほとんどを預けている信託銀行で新NISAの口座のことで行員と言い争いになった。原は、今までNISA口座で行ってきた通りに毎月決算型の商品を購入したいと申し出たものの、新NISAでは毎月分配型が購入できないといわれた。カッとなった。「毎月分配の何が悪い。父親は『グロソブ(グローバル・ソブリン・オープン)』を1200万円分くらい持っていた。毎月60円の分配金が出ていた時は、月5.76万円の分配金が受け取れた。年金生活をしていると、その6万円近くの分配金がありがたいとよく言っていたものだ。その後、分配金は40円、35円と引き下げられたものの、35円の時だって毎月3.36万円の分配金を受け取っていた。

毎月分配ファンドは、『タコ足分配』とか言われて、実力以上の分配金を支払うファンドはサギみたいに言われる風潮があったことは知っている。しかし、年金暮らしをしている者にとっては毎月決まった額が分配金として受け取れることがありがたかったんだ。父親が2019年に亡くなった時、ファンドの基準価額は5000円くらいになってしまっていたけど、ゼロになったわけじゃない。1200万円が600万円になっただけだ。分配金で1000万円以上(税込み)をもらってきているんだから、分配金の受け取りと合わせると元本の1200万円は大きく増えたことになる。老人にとっては、元本が長生きすれば良い。お金を抱えてお墓に入るわけではないのだから、毎月の分配金がキチンと出ることの方が大事だ。死ぬ時に元本が半分も残っていれば御の字だ。

※ファンドのデータから筆者作成

最近の毎月決算型は、分配金の金額がすぐに変わるし、分配金が出ない月もある。そんな分配金は望んじゃいない」と言って、テーブルをたたいてしまった。もちろん、原は、若い行員が決して悪いのではないことはわかっていた。制度として金融庁が決めたものだから、行員はその決まりを説明しただけだ。ただ、父親の代から気に入って購入してきた毎月分配型の投信を否定されたように感じられて気分が悪かったのだ。

そもそも新NISAが始まって非課税投資枠が1800万円に増額されると聞いて喜んだのは、毎月の分配金が非課税で受け取れることに大きなメリットを感じたからだった。毎月5万円の分配金から1万円も税金で持っていかれるのは相当大きな負担だと感じていたからだ。特に、60歳で役所を退職してから、分配金にかかる税金が気になるようになった。「1万円あれば、それなりにぜいたくができるぞ」と思うと、それを楽しみにもしていただけに、毎月分配ファンドを新NISAで拒絶されたことが痛手に感じられた。