大事なのは周りを頼ること

それから少しずつ佳保の状態は快方に向かっていった。

心がけたのは背負いすぎないこと、周りを頼ること。

あっという間のようでいて、ひどく長くも感じられる6カ月の療養期間があけて、佳保は仕事に復帰した。

「長い間、休んでしまって申し訳ありませんでした」

佳保は深く頭を下げたが、営業部の社員たちは温かく拍手をして出迎えてくれた。

「迷惑をかけた分を取り返せるように頑張ります」

「違いますよ、佳保さん」

前列にいた繭香がほほ笑んで、うなずいた。佳保は深呼吸をした。

「これからも迷惑をかけてしまうことがあるかもしれません。もちろん私も頑張ります。でも皆さんのことも、ぜひ頼らせてください」

佳保がそう言うと、長年お世話になっている部長が柔和な笑顔を向けてくる。

「少しずつで良い。内海は大事な戦力だから。少し肩の力抜いて、楽にやってくれ」

その言葉に、佳保は肩の力が一気に抜けていく感覚があった。

「はい、ありがとうございます」

男に負けないように、そんなことを考えすぎていたと思う。もちろん格差があるのも事実。しかし、自分が抜けた穴を男女関係なく埋めてくれたのも事実だ。だからこそ、自分はどちらにも目を背けず、目の前の部下や後輩たちが働きやすい部署にしていこう。もちろん、できることからコツコツと。

そんな風に佳保は決意を改めた。

複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。