すべての負担を押し付けられてしまった友里さん

同級生たちはそんな私たちを見て見ぬふりで、「ごめん、この後用があって」とか「今日はお疲れさま」とそそくさと店を後にしました。頼みの綱の梓も、私と目を合わせないようにしながら店を出ていきました。何だか、裏切られたような気分でした。

香織は頑としてワイン代を出そうとせず、結局、私が精算する形になりました。キャッシュカードが使えないと聞いていたので現金は多めに用意していましたが、それでも足りず、とりあえず15万円を払って残りは翌日持参することにしました。

翌日曜日、キャッシングで4万円を引き出してランチ営業が始まる前にくだんのイタリアンレストランに届けた際、店主が出て来て申し訳なさそうに言いました。

「嫌な思いさせちゃって悪かったね。香織ちゃんとこの会社がうまくいってないみたいで、最近はうちでもツケが結構たまってるんだよ」

そういうことか、と思いました。店主は、香織が次々と知り合いを連れてきては飲み代をたかるようなまねをしていることを暗に匂わせました。会の中止を渋ったのも、あのワインの追加注文も、“確信犯”だったに違いありません。

とはいえ、地元で暮らしていく上で香織は無視できない存在ですから、クラス会に呼ばないわけにはいきません。だからこそ、地元の同級生たちは事情を知らない私に幹事役を押し付けたのでしょう。梓の甘言に乗せられ、まんまと利用されたお人よしの自分に腹が立ちました。

欠席した同級生のうち2人は、当日のキャンセルをわびてその後、会費の半額の5000円を送金してくれました。それでも、私は香織たちのワイン代を含めて8万5000円分自腹を切らされたことになります。

後で自称「幹事の達人」の甥に愚痴ったら、慰められるどころか逆に「今どきそんな昭和の幹事みたいなことやってるの友里ちゃんくらいだよ」とあきれられました。甥は日程調整や出欠席はアプリで管理し、支払いもオンライン徴収で取りっぱぐれのないようにしていると自慢げに教えてくれました。

もっと早く聞いておけばよかったと後悔した一方で、香織をはじめ、地元の同級生たちへの怒りはそう簡単に消えるものではありません。3年近くたった今も、顔も見たくない気持ちです。

※個人が特定されないよう事例を一部変更、再構成しています。