数子の告白

かかりつけのお医者さんがすぐに死亡診断書を出してくれたので、宗一はてきぱきと葬儀の手配をしてくれた。

その間、蓮美はずっと数子の背中を擦っていた。

「……蓮美さん、ごめんなさい」

「どうして謝るんですか?」

「私、私だって、あんなのが本当に効くとは思ってなかったの…」

「……そうなんですね」

「でも、あんなに元気だった夫がいきなり倒れて、それで怖くなっちゃって……。夫も元気になってほしいし、あなたたちが倒れたりするのを何とかして防げないかって思って。それであんなのに頼るように……」

しなだれる数子の気持ちを蓮美はようやく理解することができた。

数子はただ、蓮美たちを守ろうとしてくれていたのだ。

それを聞き、蓮美は優しく数子の手を握りしめる。

「安心してください。私たちはいきなりいなくなったりしませんから」

そう言うと、数子の目から一筋の涙がこぼれた。

「あの人、あきれてたと思うわ……」

「そんなことありません。お義母(かあ)さんの気持ちは絶対に届いてました。だからあんな幸せそうな顔で旅立ったんだと思いますよ」

「……そう、かしらね」

「ええ。だから、しっかりと私たちもお義父(とう)さんを送り出してあげましょう」

蓮美がそう言うと、数子はゆっくりとうなずいた。

※複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。