双方が納得できる落としどころはあるのか?

「このままでは、家庭崩壊しかねない」

そう感じた筆者からおふたりに、現状を打開するための“2つの提案”をしました。

①共有の貯蓄からいったん援助する

徹さんの貯蓄では足りない50万円を、共有の貯蓄から工面する方法です。弊社では急な出費への備えとして、生活費の6カ月分を普通預金に確保するようお勧めしています。

藤井家の1カ月の生活費は、お楽しみの費用である外食費と日帰り旅行の合計額を除くと、36万円。この1カ月あたりの生活費金額を基準に6カ月分を計算すると、216万円が最低限確保したい金額となりました。

現在、共有の貯蓄が250万円あるので、差額の34万円までなら義母への援助は可能となります。

ただ、援助するには和歌子さんの許可が必要です。そこで、徹さんのお小遣いから毎月3万円を返済するようアドバイスしました。共有の貯蓄から一時的に援助する形になりますが、1年後には用立てた全額が戻ってくる計算です。これなら和歌子さんの心理的なハードルも少しは下がるのではないでしょうか。

②補助金制度でもらえるお金がないか確認する

80代のお母さまであれば、介護認定を受けていることが考えられます。

介護保険の要支援もしくは要介護と認定された方が、手すりの取り付けや段差解消などの住宅改修をしたとき、20万円を上限に利用者負担分(1~3割)を除いた金額が、あとから支給されます。自治体によっては「事前申請」することで、工事費全額ではなく、最初から自己負担額のみを支払う「受領委任払い」が利用できる場合もあります。

お住まいの地域の自治体が支給する補助金制度を併用できる場合もあるので、ケアマネジャーや自治体に相談することをお勧めします。また、断熱窓への改修や省エネ性能の高い給湯器を導入する際には、住宅省エネ補助金が使えそうです。

藤井さん夫婦のその後

しばらくして、おふたりから「母に会って来た」と連絡がありました。友人から、「お嫁さんと仲良くできないなんて、カッコ悪いばあさんだね」と言われて反省したのだとか。

初めて謝罪の言葉を聞いた帰り道。まだまだ許せる気持ちにならないけれど、すきま風が入る部屋に高齢の義母が暮らすのは無理がある。そこで、気持ちはいったん横に置いて、修繕費の援助をすることに決めたそうです。

一度は離婚まで考えた藤井さんご夫婦。治療後8年間の道のりは、きっと家族にとって必要な時間だったと思います。子どものいない人生を豊かに過ごすために、今後は家計の見直しも始めましょう。