〈前編のあらすじ〉

相談者の涼子さん(32歳・仮名)は現在育休中の会社員。

夫である健一さん(35歳・仮名)とは、かねてより家を持ちたいという話はしていたものの、ある日突然、健一さんが戸建の家の申し込みをしてきてしまいます。

よくよく話を聞くと、買い物上手な健一さんだけあって、涼子さんの“ツボ”も押さえた立地、スペックの家だったものの、不安なのは「住宅ローンを払いながら、教育費や老後資金を準備できるか」ということでした。

その相談をすべくFP前田菜緒さんの元へ夫婦2人で訪れました。キャッシュフロー表によって、教育費と老後資金には大きな問題はないと分かったものの、マイホームならではの出費「メンテナンス代」という盲点を指摘されます。

実際にリフォーム等メンテナンスの必要が出てくるのは10年以上先の話だからこそ、時間を味方につけた積立投資で資金を準備するのがおすすめとのアドバイスに、少々二の足を踏んでいる様子の涼子さん。それはなぜなのでしょうか?

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始めたほうがいいと分かっていながら、いつまでも始めない人の常套句とは

涼子さんは、「育休中で収入が少ないから、復帰したら何か運用を始めたいと思っていました」と言います。ただ、この「◯◯になったら、□□しよう」というフレーズは、いつまで経っても始められないフレーズでもあります。

資産運用においては「お金が貯まったら始めよう」「勉強したら始めよう」とよく聞きますが、そう言っているうちは、いつまでたっても始められないのです。

涼子さんは、「復帰したら」と言っていましたが、時短で復帰するため、育休手当と比べてそれほど収入に大きな差はありません。子どもが小さいうちが貯めどきですから、この相談をきっかけに運用をはじめることにしました。

メンテナンス費用にiDeCoとつみたてNISAを活用

今回は15年後に外壁塗装300万円、35年後にリフォーム、資材高騰やインフレも考え800万円と目安時期と金額を仮定して、積立額を算出しました。

そして、外壁塗装費用はつみたてNISAで月1万3000円、リフォーム費用は涼子さんのiDeCoで月1万1000円を積み立てることにしました。この積立額は、積立期間から利回り3%と仮定して、逆算して算出した金額です。

リフォーム費用を貯める“箱”に涼子さんのiDeCoを選んだのは、涼子さんには退職金がないためです。涼子さん自身の老後資金を作る必要性があることと、税金面でも、涼子さんの方がベターと考えたからです。退職金には、一定額まで非課税で受け取れる退職所得控除という非課税枠がありますが、この枠に収まるかどうかは退職金とiDeCoを合算して判断します。

※一時受け取りの場合

健一さんには、退職金がありますから退職金とiDeCoを合算すると、非課税枠を超える可能性があります。一方、涼子さんには退職金がありませんから、今からiDeCoを始めるのなら課税される可能性は低いと思われます。

さらに、涼子さんの会社は退職年齢が65歳です。iDeCoの加入年齢は60歳までですが、2022年5月からは会社員であれば65歳になるまで加入できるようになります。リフォーム時期が65歳以降になると、積立は続けられませんが、運用自体は75歳(2022年4月改正)まで続けられますから、大きな問題はないでしょう。