開口一番、弟が突きつけた理不尽な要求
ある日「友人として遺産分割に同席してほしい」と昭が私に相談へ来た。私は敬にもあらかじめ相談した上で、同席することとなった。
そこで私は信じられないものを見た。
なんと敬が「俺はこの家に住み続けたい。だから家と土地を単独相続させてほしい」と開口一番言い放ったのだ。そしてすかさず、「それができないなら現金一括で2000万円払ってくれ」と主張し始めた。
敬は最初から話し合いなどする気は毛頭なく、家と土地、あるいは相当する現金を寄越せと要求するつもりだったのだ。
それに対して昭が「固定資産税や相続税とかその後のことまで考えているのか」と聞けば、「税金のことなんて分からないし、考えても仕方ない」と白状する始末だった。
この反応には同席していた昭の妻・有希も眉をひそめ、敬にあからさまに嫌悪感を示した。
苦肉の策が招く家庭崩壊への序章
先に述べたように、一般的な法律論で言えば兄弟は均等に遺産を相続する。不動産も共有する形で分けるのであれば、自宅は持ち分2分の1ずつで1000万円、現金は500万円の合計1500万円で均等に分けることになる。
とはいえ、合意さえあれば相続分は均等でなくとも良いとされている。しかし、遺産分割は原則、相続人全員の合意がなければ成立しない。
相続が成立しないことには相続税の申告と納付はもちろん、不動産の登記も行えず、権利と義務が不安定な状態になってしまう。そのため今回の昭と敬のような場合、まずは不動産を共有で2分の1ずつ、預金も2分の1ずつで相続し、手続きを進めることが多い。
それに従い、昭と敬も「じゃあ一旦は……」という形で手続きを進めた。
●苦肉の策として「家を兄弟で共有する」という道を選んだ昭さん。一見、平等に解決したかのように見えたこの決断が、のちに昭さんの家庭を崩壊させる時限爆弾へと変わります。後編【「なぜあなたの弟をうちが養うの?」妻と娘が去り家庭崩壊…半ひきこもりの弟に依存された兄の“あまりに虚しい末路”】では、弟の驚きの言動と、昭さんが迎えた衝撃の結末を明かします。
※プライバシー保護のため、事例内容に一部変更を加えています。
