2026年度より62万円を基準に支給停止が決まる
友行さんは年金事務所の職員から、厚生年金加入者などが対象となる在職老齢年金制度について説明を受けます。(1)老齢厚生年金のうち報酬比例部分の月額、(2)毎月の給与や役員報酬にあたる標準報酬月額、(3)賞与にあたる標準賞与額の12分の1、これらを合計して現行制度上51万円(※48万円を基準に毎年度改定して2025年度は51万円)を超えると、その超えた分の2分の1に相当する(1)の額が支給停止、つまりカットされることになります。友行さんの場合、報酬比例部分の年金は65歳時点で月12万円(年144万円)受けられる見込みで、一方、役員報酬として月100万円を受け取っていますが、標準報酬月額についてはその上限額の65万円となります。
(1)12万円と(2)65万円の合計は77万円ですので、51万円を超えています。その超えた26万円の2分の1である13万円が支給停止される計算になりますが、支給停止額13万円が年金額12万円を超えている場合は報酬比例部分の全額が支給停止になります。
しかし、その51万円の支給停止基準額が、2026年度から62万円を基準とした額に改正されることになります。62万円を基準として毎年度変わることになるので、必ずしも62万円になるとは限りませんが、現在の51万円よりは緩い基準になり、支給停止がかかりにくくなるでしょう。
仮にその支給停止の基準額を62万円とした場合、(1)(2)の合計77万円の額は62万円より15万円超え、その2分の1は7万5000円。報酬比例部分12万円のうち7万5000円停止され、4万5000円が支給される計算です。つまり報酬比例部分の37.5%分の年金の支給となります。なお、老齢厚生年金のうち経過的加算額や老齢基礎年金は全額支給されることになっています。友行さんは「報酬を毎月100万円ももらっていると改正されてもカットされるんだな。けど、カットされるのは一部で済むようになるのか。随分違うな」と改正による恩恵があると感じます。
安堵したのも束の間…意外な事実を告げられる
友行さんは「役員報酬はできるだけ受け取りたいし、じゃあ65歳以降ずっと報酬が100万円でも、報酬比例部分の年金が一部でも出続けることになるんですね」と尋ねます。しかし、これに対して職員は「そうとは言い切れないところもあります。細かい計算まではできませんが、将来的にカットされる割合がまた増えることになり、場合によっては全額支給停止になる可能性もあります」と伝えます。
62万円へと停止基準が緩くなって年金はカットされにくくなるのに、なぜまたカットされる割合が高くなり、場合によっては全額支給停止になり得るのでしょうか。どうやらこれには別の制度改正が関わっているようです。
●一度は安堵した友行さんを再び不安にさせた「別の制度改正」とは何なのか? 後編【2026年からの改正で年金カットが緩和されるはずが…月100万円の役員報酬を受け取る社長に迫る「上限額引き上げ」の落とし穴】で解説します。
※プライバシー保護のため、事例内容に一部変更を加えています。
