本音を語り出す早希

沈黙の後、やがて早希は答えた。

「私もね、実家帰ってから色々考えた……あなたの言う通りだよ。一日中湊斗と2人きりで、行動も制限されて、自分で認識してる以上にストレス溜まってたんだと思う。だから、買い物に頼った。でもね、今は軽率だったと思ってるの。あなたのボーナスが減っちゃって、私も育休中で、将来のことを考えれば浪費してる場合じゃなかったのに……だから、私もごめんなさい」

「早希……」

「でもね……家のこと、全部1人で抱えるのは、やっぱり無理」

最後の言葉には、少し力がこもっていた。隆太は大きくうなずいた。

「これからは、俺ももっとやる。ちゃんと分担して……もう早希だけに押し付けたりしないよ」

「具体的には?」

玄関先、上がり框に腰かけながら、そのまま2人は言葉を交わし合った。

そして、毎月家計に関するミーティングを行うこと、衝動買いを防ぐため24時間のクールタイムを設けることなど、いくつかの新しいルールが決まった。家事・育児の分担も一から見直し、隆太はまず早希に家電の使い方を習うことになった。

それぞれの言葉が重なっていくたびに、空気にふわりと温度が戻ってくるようだった。

「早希……家に帰ってきてくれるか?」

早希はふっと目を細めた後、うなずいた。

庇の外では、雨脚がいつの間にか弱まっていた。霧のような秋の長雨が、午後の風景を優しく塗り替えていく。