偏見に満ちた侮辱の連続

「達子さんも感謝しないとね。こんな良い旦那、そうそう見つかるもんじゃないわよ」

「……はい、そうですね」

「今どき高卒の女なんて就職も結婚も普通はできないのよ」

弥生の言葉は偏見に満ちていて、あまりにも大袈裟だ。就職は関係あるかもしれないが結婚に学歴は関係ない。

要は、弥生たちが言いたいのはお前は春樹の嫁に相応しくないということだ。この一言をいろいろな表現を使って達子に言ってくる。帰省する度に嫌味を言われるので、達子は気が重くなるのだった。

「夫婦共働きでさ、稼ぐのは当たり前の時代なのに、嫁がまともに稼げないってのはどうなのよ? 家事やってるからいいとか思ってないわよね?」

「いえ、そんなことは……」

達子は小さな声で否定をする。たしかに給料は春樹のほうがはるかにいいが、達子だって正社員として仕事をしている。もちろんそんなことは彼女たちには関係がない。

達子は乾いた喉を潤そうとお茶に手を伸ばす。すると指が当たってしまい湯飲みを倒してしまった。お茶がテーブルに零れる。慌てて達子はハンカチでお茶を拭き取った。しかしそんな達子を見て弥生は呆れたような声を出した。

「なにやってるのよもう! ほんとにグズよね。そんなんだから大学も行けないのよ」

「すいません……」

達子が謝ると、春樹は布巾を持ってきてくれてテーブルを一緒に拭いてくれた。

「こんなの別に何でもないだろ。そんなに責めることもないじゃん」

春樹がにわかに声を荒げたが、達子は目線でストップをかける。

こんなことで家族が揉めるのは良くない。春樹は達子の味方なのだが、達子からあまり介入しないようにしてほしいとお願いしていた。

そう、耐えればいいのだ。自分が堪えて、この降りかかり続ける理不尽をやり過ごせばいい。どうせ数日の辛抱だ。達子はお茶を吸って色が変わっていくハンカチを握りながら、そう何度も自分に言い聞かせていた。

●義母と義姉による執拗な嫁いびり、学歴マウントに耐え続けている達子。高卒で働く理由を聞いた時に家族に衝撃が…… !後編【「7000万の損失だ」義母の学歴マウントに涙する嫁。亡き父を貶められ、夫が怒号を放った帰省修羅場】にて、詳細をお伝えします。

※複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。