<前編のあらすじ>

妻の達子は夫・春樹とともに義実家へ帰省する。到着早々、義母や義姉から冷たい態度や嫌味を浴びせられ、居心地の悪さを痛感する。

居間では春樹の安定した職に義母と義姉が喜ぶ一方、達子には「稼げない嫁」「高卒の女」といった言葉が突き刺さる。正社員として働いていても評価されず、孤立感が募っていく。

やがてお茶をこぼした小さな失敗さえ責められるが、達子は波風を立てまいと耐える。数日の辛抱だと自分に言い聞かせ、理不尽な言葉をただ受け止めるのだった。

●【前編】義母と義姉の「学歴マウント」で地獄絵図…帰省の度に嫌味を浴びせられても嫁が我慢を続けるワケ

暴走する義姉の嫉妬心

夜になると、弥生が出前をとったお寿司を食べ、お酒を飲みながらゆっくりと過ごせていたが、食事が終わって春樹がお風呂に入るためにリビングを出ると、イビリはまたエスカレートしていった。

愛香は顔を赤らめながら達子を見てくる。

「こんなお寿司もさ、あんたはしょっちゅう食べられるんでしょ? 春樹の稼ぎのおかげで」

「そ、そうですね……」

弥生と愛香は同じように嫌味を言ってくるが、愛香がそんなことをしてくる動機は嫉妬だった。

話を聞いているかぎり、愛香の家庭はかなり金銭的に苦しいらしい。もちろん愛香も働いているがそれでもいろいろと大変だということは伝わって来ていた。だからこそ春樹の嫁としてぬくぬくと暮らしているように見せる達子が羨ましいのだろう。

「知ってる? 大卒と高卒だと生涯年収が全然違うの。特に高卒女と大卒男じゃ7000万くらい稼ぐ額に差が出てくるんだからね」

「ええ、そうなの⁉」

弥生はことさら大きな声を出してきた。

「そんなのウチの春樹が損してるじゃない。大卒の子と結婚してたらもっと楽な生活ができたのに」

「そうよ。あんたはその7000万の差を埋める何かがあるわけ? 見たところそんなものは何も持ってない感じだけどさ」

達子は何も答えられなかった。

「あんたの親ってどんなつもりで教育をしてたのかしら? 大学には行かなくて良いって親の教育方針なの? 信じられないわ」

弥生の矛先は達子から親へと向けられた。その言葉を聞いた瞬間、心臓を切りつけられたかのような痛みが走る。達子はコタツの下で拳を固く握りしめる。

「……いえ、そういうことはないですよ。ただ環境的に難しくて」

「……何それ?」

「あまり気持ちのいい話ではありませんが」

達子はそう前置きし、深く息を吸って話し始めた。