告白する高卒の真実
達子は学内でも勉強はできるほうで、もちろん3年生になると進学クラスに入っていた。当然大学には進学するものだと思っていたが、5月に父にガンが見つかる。発見されたときはかなり進行していて余命は3カ月と言い渡された。
そして医者の宣告通り、3カ月後に父は亡くなり、母は家族を養うためにパートに出るようになった。父がいたときも決して裕福とは言えない状況で、奨学金を借りて進学することは確定だったが、大黒柱だった父が亡くなってしまうと、大学に行くことは不可能だ。それどころか達子自身も仕事をして家計を支えないといけなくなった。
だから達子は、進学を諦めて就職をしたのだった。
あまり話したくないことだったし、聞いて気持ちがいいものでもないので黙っていたが、両親を貶められることだけは許せなかった。
やむを得ない事情があると分かり、弥生と愛香は面を食らっていた。しかし弥生も愛香も話を聞いた上で、父を嘲笑する。
「迷惑な親ね。保険金とかそんなのはしてなかったの? そういう計画性のない親って本当に困るわ。だからこんな高卒の女が社会に出てくるのよ」
弥生の言葉を聞いた瞬間、体が熱くなった。そして達子は弥生を睨みつける。
「あなたに何が分かるんですか……⁉」
「……え?」
「他人のあなたに父を責められる筋合いはありませんよ! 父はずっと寝る間も惜しんで仕事をしてくれてたんです! それでも生活がギリギリで貯金だってできなかったんです! そして私が大学に行けないことを一番申し訳なく思ってたのも父ですよ! 寝たきりになって動くこともできないのに父は私宛に謝罪の手紙を残してくれました! それだけ父は私のことを思ってくれてたのに……!」
そこで達子は感情が溢れて、言葉が出てこなかった。嗚咽をしながら泣いている達子を見て、愛香は呆れながらお酒を飲む。
「あーあ、もう嫌ね。こんなめでたい正月に何を泣いてんのよ。愛する家族を高卒の女に盗られて泣きたいのはこっちだってのにさぁ」
その瞬間、テーブルに拳が叩きつけられた。