冬の澄んだ青空を見上げて、達子は大きくため息をついた。
冷たい風に体がこわばる。マンションの駐車場の車にはちらほらとしめ飾りを施しているものがある。
普段はこの時間は会社や学校に向かう人たちがたくさんいるのだが、今は誰の姿もなく、街全体が寝静まっているように感じられた。
「達子、大丈夫?」
背後から夫の春樹が声をかけてきたので、達子は無言で頷き車に乗り込んだ。
春樹は荷物をトランクに入れ運転席に乗り込んでエンジンをかける。
よし、頑張ろう、とこの瞬間に達子は腹を決める。
冷ややかなお出迎え
毎年、正月は春樹の実家に帰るのが決まりだった。しかし達子はこの行事が1年のなかで一番嫌いだった。
車で4時間ほど走ると、義実家に到着する。春樹は荷物を取り出して、インターフォンを押した。すると義母の弥生が現れ、春樹に声をかけてきた。
「おかえりなさい。寒かったでしょ? ほら早く中に入って。あんたの好きなお菓子を用意してるからさ」
達子は春樹の横に立ち頭を下げる。
「お久しぶりです」
そんな達子を弥生は冷たい目で見てくる。
「ああ、どうも」
それだけ告げると弥生は春樹と一緒に中に入っていく。
「あなた、そんなに荷物持って重たくないの? どうして達子さんは荷物の1つも持たないのかしら?」
「達子はお土産を持ってるから」
「あなたは他にもたくさん仕事をしてるでしょ?」
弥生はグチグチと文句を言いながら達子の前を歩く。達子はそれに対して黙ってやり過ごした。これが一番いい方法だと経験から知っていたからだ。