<前編のあらすじ>
芙美子さん(仮名)は9年前の55歳のとき、会社経営者だった夫の良彦さん(仮名)を亡くし、遺族厚生年金を受給し始めました。
新社長となった息子の健太さん(仮名)が会社経営に不安を抱く姿を見て、芙美子さんは「ここは私が頑張ったほうがいいかも」と決意。パート勤務から取締役に転身し、月70万円の役員報酬を受け取ることになります。
そうして64歳になった芙美子さんが65歳を前に年金事務所を訪れると、職員から「今のままですと、65歳以降は年金が減ることになります」と衝撃的な事実を告げられました。
●前編:【「65歳以降の収入が高くても年金はそのまま」と思っていたら…亡き夫の会社で役員を務める妻がハマった年金調整の落とし穴】
65歳から年金の内訳が変わる
65歳まで芙美子さんは寡婦加算込みの遺族厚生年金として年間165万円を受け取ることになっています。役員報酬をたくさん受け取っていても年金は特に調整されません。
しかし、65歳になると年金の内訳が変わります。老齢基礎年金と老齢厚生年金、そして60万円程度の寡婦加算がなくなった遺族厚生年金で受け取ることになります。さらに、その遺族厚生年金は芙美子さん自身の老齢厚生年金を差し引いた額で受給することになります。
芙美子さんの年金はまず、①老齢基礎年金が80万円、②老齢厚生年金が60万円となります。そして、老齢厚生年金相当額を差し引く前の遺族厚生年金は105万円で、③差額分の遺族厚生年金は老齢厚生年金60万円を差し引いた45万円となります。そのため、①80万円と②60万円と③45万円で合計185万円になる計算です。これだけ見ると、65歳前の165万円より多い額となります。