夫を亡くして遺族年金を受給し始めるケースもあることでしょう。遺族年金そのものは収入が高くてもカットされなくても、65歳以降に受けられる年金の内訳が変わると、調整の対象になることがあります。

会社経営者の夫が他界、遺族年金の受給が始まる

芙美子さん(仮名、64歳)は55歳だった9年前、会社経営者の良彦さん(仮名、当時63歳)を亡くしました。良彦さんの生前、芙美子さんはその会社をパート勤務で手伝い、一方、息子の健太さん(仮名、当時29歳)は取締役となり、後継者となる予定でした。

厚生年金に加入し続けていた良彦さんの死後、芙美子さんは年金事務所で遺族年金の手続きを済ませます。寡婦加算込みの遺族厚生年金を受給できることになるという説明がされ、実際にその支給が始まりました。

取締役として会社の経営に加わることに

良彦さん亡き後、経営していた会社のことも考えなくてはなりませんでした。良彦さんの死からしばらくして、新社長になっていた健太さんは「自分が社長っていったって、これから上手くやっていけるかな」と思っています。良彦さんの生前から後継者となる予定だった健太さんでしたが、会社を経営するにはまだまだ経験も不足し、会社をどうしたらいいか不安に感じていました。

良彦さんの存命中、芙美子さんがいることで会社が回っていることを感じていた健太さんは事業のこと、顧客のこと、従業員のことを考え、健太さんより会社のことを知っているはずの芙美子さんに、取締役として今まで以上に会社経営のことを助けてもらおうと考えます。

これに対し芙美子さんも「健太は会社を継ぐ予定ではいたものの、こんなに早く社長になるとは思わなかった。まだ若いし、ここは私が頑張ったほうがいいかも……」と思います。「そういえば収入が高くても、遺族年金は減らされないみたいな話を年金事務所で聞いたな」と遺族年金手続時の話も思い出します。

こうして、芙美子さんは亡き夫が経営し、息子が継いだ会社の取締役となり、役員報酬を月70万円受け取ることになりました。それに合わせて厚生年金に加入するようにもなりました。