家族関係は破綻するも抑圧から開放

それから帰るまでの数時間は、手のひらを返したように美江は詩織に嫌味をぶつけてきた。帰り際も、いつもなら名残惜しそうに見送ってくれていたのだが今回はそれもなしだった。

もちろん詩織はそんなのは全く気にしてなかったが、美江との関係はこの先悪化していくのだろうなと思った。

レンタカーを運転しながら直樹は声をかけてくる。

「大丈夫? 完全に母さんに目をつけられたよね……」

「全然気にしてないよ。その気になったら会わなければいいだけよ。帰省だって何となく習慣で毎年してたけど、別にしないといけない理由なんてないんだから」

詩織がそう伝えると直樹は少し嬉しそうに笑みを浮かべた。

「……ありがとう」

「いいよ、別に。でももう少ししっかりしてよね」

詩織が冗談めかして微笑むと、直樹ははっきりとうなずいて前を向いた。