「熱っ!」台所で料理中の義母にまさかの事態
「お義母さん、何か手伝います」
「いいの、いいの。たまの帰省なんだから、ゆっくりしてなさい」
そう言うと、義母はめぐみたちを居間の畳に座らせ、自分はすりガラスの格子戸を開けて台所に立った。
キッチンは古びてはいるが、いつもきちんと整っている。庭で採れたナスやトマト、しそなどがザルに盛られ、夏の色を放っていた。
「あのね、おばあちゃん。この前、学校の図書室でね……」
台所のテーブルで特等席を確保した真希は、料理をする義母の背中に向かって終始話かけていた。義母も時に「へえ」「そうなの」とうなずきながら、彼女の話に付き合っている。
ところが、義母が突然、「熱っ!」と小さく声をあげた。めぐみは反射的に立ち上がった。
「お義母さん、大丈夫ですか!?」
どうやら鍋の熱湯がかかり、手の甲を軽くやけどしたらしい。めぐみはとっさに冷水を出そうと義母のもとに駆け寄ろうとした。すると、それより早く真希が冷蔵庫から氷を出し、手元のタオルをつかんで持っていった。
「おばあちゃん、これ、当てて! 冷やさないと!」
「まあ……ありがとう、真希ちゃん」
氷をそっと手の甲に当てる真希に、義母は目尻を下げ、なぜか複雑そうな顔を見せた。初めて見る義母の表情に、めぐみは思わず動きを止めた。