<前編のあらすじ>
晴子は結婚から20年、義母・睦美からの嫁いびりに悩んでいた。ここ数年は義父の死、孫の悠斗が大学進学を機に家を出てからは激しさが増していた。
ある日もまた、義母が晴子をいびる格好の理由ができてしまった。悠斗が帰省を予定していたのだが、バイトを頼まれてしまったと帰省を断念する旨の連絡があったのだ。義母は掃除が足らないと晴子をなじり、夫と二人食事に出かけてしまう。
溜息交じりに家で一人、レトルトカレーを食べていると電話が鳴った。
晴子が受話器を取ると電話の主は慌てた様子で二人が事故にあったと告げるのだった。
前編:「ここのホコリ、なに?」義母の徹底的な嫁いびりでため息ばかりの日々に起こった“まさかのアクシデント”
病院で待っていたのは
病院の白い壁が、異様に冷たく見えた。照明の光も、どこか遠い世界のもののようだった。
医師が口を開き何かを口にしている。だが、晴子はその言葉を最後まで聞くことなく、崩れ落ちた。
慎之介は、病院に運ばれたときにはすでに息を引き取っていた。
事故は、信号無視の車による追突だったらしい。運転席にいた夫は、ほぼ即死に近い状態だったという。病室のベッドに、白い布をかけられたままの慎之介の身体には、もうかつてのぬくもりはなかった。
急遽帰省した悠斗とともに葬儀の準備を進める晴子を待っていたのは、もうひとつの厳しい現実だった。
義母は一命をとりとめたが、介護が必要な状態になってしまった。ホームに入所し生活する話も出たが、義母自身が「施設なんてまっぴらごめん」と拒否したこともあり、晴子は夫の死を受け止める間もなく、在宅介護の日々を始めることになった。