3人で思い出の品を探し

3人で慎之介の遺品整理をしたこともある。仏間の押し入れの奥から出てきた古いカメラやアルバムを囲みながら、ぽつぽつと思い出話を交わした。

「あ、これ……慎之介が撮った写真だね。伊勢に旅行に行ったときの……」

「へえ、ばあちゃん、若いな。じいちゃんも。母ちゃんは写ってないの?」

「あ、ああ……たしかこのときは、悠斗と一緒に留守番してたんじゃないかな」

「ふうん」

「そうね……そうだった……あのとき私が……」

言いかけて、義母はそのまま言葉を飲み込んだ。代わりに、手元の写真をしばらく見つめていた。

帰っていく悠斗を見送りがてら、車いすを押して散歩に出かけた。家へ戻る道中、公園でひと休みしながら、義母は空を見上げる。

「あなたに……ここまで面倒見てもらえるとは……思ってなかった」

風に紛れるように、そんな一言が聞こえた。

「私も……正直、ここまで続けられるとは思いませんでしたよ」

晴子は笑ってそう返した。

それが本音だった。辛くなかったと言えば嘘になる。しかし、逃げなくてよかったとも思えるようになっていた。

「それそろ帰りましょうか」

「そうね……」

義母の車いすを押しながら帰る、家までの道のり。

ありふれた街路樹が、やけに鮮やかに晴子の目に映った。