介護した次男 vs 平等を主張する長男・長女

寿子さんは子どもたち3人を集め、公平な分配を目指す自身の考えについてゆっくり説明したという。

それに対し、最初に口を開いたのは次男の正樹さんだった。

「母さん、俺が一番近くで世話してきたことはみんな分かってると思う。だから、それなりの分け前があってもいいんじゃないか」

正樹さんは長年にわたり寿子さんの介護を担ってきた。毎日、寿子さんの自宅を訪れては掃除・買い物・通院の付き添いを行い、その献身は目を見張るものがあった。一方、長男と長女はそれぞれの家庭を優先していたことから、正樹さんに比べると物理的にも精神的にも寿子さんとの距離があった。

だからこそ家族会議の場で正樹さんが口火を切るのも無理はなかった。

しかし、寿子さんが何も言えずに黙り込んでいると、長男がやや冷たく言い放った。

「お前には感謝してる。でも、財産は平等にすべきじゃないか。親の金を“報酬”にするのは違うと思うよ」

姉である長女も、「介護したことは立派だけど、私たちも親孝行しなかったわけじゃない」と付け加えた。

こうして話し合いは、当初の「公平な分配」から「誰がどれだけ貢献したか」を巡る論争に変わっていった。

●きょうだいの話し合いの結末は? そして遺言書が招いた予想外の結末とは? 後編【78歳母の“子を思う気持ち”が裏目に…平等な相続を目指して作った遺言書が「皮肉な結末」を招いたワケ】でお伝えします。

※プライバシー保護のため、事例内容に一部変更を加えています。