二人の意見は平行線をたどり……

想定外の頑なさに、浮き立っていた成美の気持ちは冷めていき、段々と怒りを覚えた。そんなに自分の子供のことが信じられないのだろうか。

「それはそうかもしれないけど、そんなこと言ってたらいつまで経っても家族旅行なんていけないよ? それでもいいの?」

成美は責めるように言葉を発したが、宏昌はすぐに反論を並べた。

「そこまでは言い過ぎだって。3歳は早いんじゃないかって言ってるんだよ。そりゃ小学校とか行ったらもう大丈夫だと思うけどさ……」

「じゃああと4年も旅行には行けないって言うの?」

成美は宏昌を見据える。

「私たち、陸人が生まれる前はよく旅行とか行ってたじゃない? また皆で旅行に行けるようになりたいと思ってるの」

「俺だってそうだよ。だからこそ皆で楽しめるようになるにはもう少し時間がかかるって言ってるんだ」

宏昌の言ってることが間違っているとは言い切れない。でも陸人のことは自分のほうがよく分かっている。土日に少し遊んでやるだけの宏昌に、一体何が分かるというのだろうか。

「別に3時間くらいの移動なら陸人は大丈夫だって。飛行機だってきっと大人しく乗ってくれるわ。昔、旅行で京都に行ったの覚えてる? お寺回ったりして楽しかったでしょ?」

成美がそう提案すると、宏昌はもう1度呆れたようなため息をつく。

「ゴールデンウィークの京都がどれだけ人が混むとか考えた? 案を出すんならそこら辺のところをちゃんと考えておいてくれよ」

「……いやそれは分からないけど」

宏昌の指摘に成美は図星を突かれる。

「今ってコロナが明けた反動からインバウンドのお客さんがスゴい来てるんだよ。それに加えて大型連休でしょ? とんでもない人数がやってくるって本当に分かってる? その中でも京都は人気だからさ。百歩譲って、行くとしてもゴールデンウィークは避けるのは普通だって」

「……いや普通かどうかは分からないけど。別に京都じゃなくても別のところでもいいんだけど」

「何でそんなに今年にこだわってんの? もう3年くらい行ってないんだからあと3、4年我慢するくらいわけないでしょ?」

宏昌は冷たく言い放つ。そんな宏昌からは家族の事を思いやる気持ちがないように感じた。