夫はというと

夜になり夫の宏昌が仕事から帰ってきた。晩ご飯を食べ、陸人を寝かしつけた後、成美はどうしても話したかった話題を口にする。

「ねえ、今年のゴールデンウィークさ、どっか行こうよ」

心を躍らせながら成美は提案したが、宏昌の反応は全く芳しくなかった。

「ゴールデンウィーク? 遠出ってこと?」

「そうそう。温泉とか遊園地とか行きたくない?」

宏昌は目の前のビールに口をつける。

「……陸人はどうするんだよ? 遠出なんてしたことないだろ?」

「もう陸人だって変に泣きわめいたり騒いだりしないわよ。幼稚園でも先生から大人しくて礼儀正しい子だって言われてたし」

宏昌は軽く目を伏せる。

「そりゃ親に気を遣って褒めるに決まってるだろ」

「でもちょっと前に梨花、ほら、私の高校からの友達の家に遊びに行くときバスを使ったけど全然騒いだりしなかったわよ。窓の外をずっと大人しく眺めてたから」
宏昌は目頭を指で押さえる。

「……たった1回だろ? それに遠出だと電車か新幹線になるわけで、そうなるとまた違うって」

「じゃあレンタカーは?」

「やだよ。せっかくの休みになんで長時間運転しなきゃなんないのさ。成美が運転するっていうならいいけど、ペーパーなんだから無理でしょ?」

宏昌はため息をついた。