<前編のまとめ>
エリート商社マンだった佐々木直樹(仮名・57歳)さんは、理想を描いてM&Aで中小企業の社長になりました。
買収額の1500万円は退職金と貯金でまかない、「社長夫人になるなんて、まるで夢みたい」と喜ぶ、妻と共に新天地に赴きます。
美味しい地元の食材に温泉。会社の規模は小さいが、のんびりと暮らせるはずだったのですが――。
●前編:「社長夫人になるなんて夢みたい」妻が喜んだのも束の間…1500万円で“社長の椅子”に座った夫に待ち受けていた悲惨な現実
次々と起きるトラブル
佐々木さんが社長に就任してから3か月が経った頃、古参の熟練社員2名が新社長となった佐々木さんをよく思っておらずに退職を申し出たのでした。1人は20年以上のベテランの技術者で、もう1人は得意先との信頼関係を築き生産管理や納期調整などの担当をしてきた現場の管理責任者だったのです。
「社長が代わってから、現場の空気が変わった」
退職理由はいきなり会社に入ってきた新参者が社長だということです。佐々木さんは当然引き留めましたが、2か月間は引継ぎのために留まってはくれましたが、結局、その後任を探す余裕もなく、現場の業務は佐々木さんが一手に背負うことになる。
会社にとって重要なキーマン二人の退職によって現場は大混乱することとなり、納期遅延が続いてしまったことで売上は大幅に減少。残った社員には毎日のように残業してもらい対応していましたが度重なる納期遅延と不具合の続出で取引先からは「次回の契約は見送らせてほしい」と言われてしまいます。
そして――追い討ちのように、税務署の調査が入りました。
前任の社長が業務委託していた外注作業員が、実態としては社員と変わらない働き方をしていたというのです。その結果、源泉所得税と消費税の追徴課税を命じられたのです。