<前編のあらすじ>
企業のSDGs研修で興味を抱いた、明日香は7歳になる娘の美里と共に、湘南の海岸で開催のゴミ拾いボランティアに参加していた。
普段は海水浴などで楽しむだけの海も、ごみを拾おうとしてつぶさに見てみると、違ったが姿が見えてくるもの。
ペットボトルからビニール袋、果ては流れ着いた動物の遺骸まで、肌寒い春の海岸で娘と共にゴミを拾う明日香だが、ふとした拍子に手に鋭い痛みが走る。
痛みは耐えがたいほど強くなり、明日香は自力で立っていることもままならなくなってしまう……。
前編:SDGsの日、親子でゴミ拾いに参加した母を襲った、立っていられないほどの激痛の正体
痛みの正体は
駆けつけたスタッフに支えられながら、結局明日香はボランティア団体の詰め所へと向かった。簡易テントが並ぶその一角に待機していた救護スタッフは、明日香の手のひらを見るや眉をひそめた。
「これは……クラゲに刺された可能性が高いですね」
「えっ? クラゲ?」
思わず驚いて聞き返した。
季節はまだ春だ。明日香は小さい頃からずっと湘南に住んでいるが、春にクラゲに刺されたなんて話、聞いたことがなかった。
「でも、私、ずっと砂浜にいましたし……まさかこの時期にクラゲなんて」
「実は最近、こういうケースが増えてるんです。砂に埋もれているクラゲに触れてしまうと、知らずに刺されることがあるんです。温暖化の影響で水温が上がって、小さなクラゲが予想外の時期に浜に打ち上げられることがあるんですよ」
まさかこんな形で環境の変化を体感するとは思ってもみなかったので、明日香は言葉を失った。美理が不安そうに明日香の手をじっと見つめていた。
「ママ、大丈夫? 痛いの治る?」
「大丈夫よ、ちゃんと見てもらうからね」
夏場はライフセーバーとして活動しているという救護スタッフは、まず目視でクラゲの触手が残っていないか確認し、患部に冷たい食塩水をかけた。そして最後に軟膏クリームを塗ってくれた。
「これで落ち着くと思います。強くこすらないように気をつけてくださいね。万が一、痛みが引かなかったり、水ぶくれになったりしたら教えてください。ゴミ拾いはいったん無理せず、テントの外にベンチもあるのでゆっくり休んでくださいね」