波の音が静かに響く朝、明日香は7歳の娘、美理とともに幼い頃から慣れ親しんだ湘南の海岸を訪れていた。

青い空の下、浜辺に集まったのは、地域の家族連れやボランティア団体のメンバーたち。めいめいが支給のゴミ袋を手に、海岸線の清掃に勤しんでいた。

「ママー、もっとあっちのほうに行って来てもいい?」

美理が、波打ち際のほうを指差しながら言った。黄色い軍手に包まれた彼女の小さな手が眩しい。

「いいよ。でも、ちゃんとママの見える範囲でね」

「わかったー!」

「あんまり海の方へ行くとズボンが濡れちゃうよー!」

「わかってるー!」

明日香は駆けていく美理の背中を目で追いながら。足元に落ちていたビニール袋の切れ端を拾った。

海岸の清掃に興味を持ったのは、もともと会社で「SDGs研修」を受講したことがきっかけだ。気になって自分なりに調べてみると、地元である神奈川の海岸清掃費は年間で2億4000万円もかかっているらしいことを知った。

湘南でも「みんなで考えるSDGsの日」に合わせてゴミ拾いイベントが開催されているのを見つけ、親子で環境のことを学ぶいい機会だと思い、美理と一緒に参加することにしたのだ。