意識して見てみると

普段は何気なく歩いているこの海岸も、こうして改めて見てみると種々様々なものが落ちている。

ビニール袋やペットボトル、夏からずっと放置されているらしい花火のゴミ、子どもの背丈ほどの巨大な流木。なかには、波にさらわれて遥々流れ着いたのだろう、海外製のパッケージの空き缶まで混じっていた。

「こんなにゴミがあるんだね……」

明日香が近づいていくと、美理が小さなプラスチックの破片を器用に拾いながらつぶやいた。

「そうね。ゴミだらけだと海の生き物たちが困っちゃうね」

明日香は優しく答えながら、自分もせっせと手を動かした。ビニール袋を拾い上げると、砂にまみれたエイリアンのようなものが顔を出した。

「うわっ……!」

ギョッとして思わず声を上げると、近くにいたスタッフが「それはもう死んでいるから、触らないほうがいいですよ」と教えてくれた。どうやらゴミだけでなく、生き物の死骸も流れ着いているらしい。

「ママ、見て見て! すごいの見つけたよ!!」

美理が拾ったものを嬉しそうに掲げながら明日香のところに持ってきた。パッと見た感じ、それは打ち上げられた海藻のようだった。美理の身長では、目一杯腕を上に伸ばしても、引きずってしまうほどの長さだ。

「本当だ。大物を見つけたね。でも、それはたぶんゴミじゃなくて自然のものかな」

「ふうん、そっか。じゃあ、これは拾わなくていいやつか」

少しがっかりしたように美理が海藻を手放そうとしたとき、さっきのスタッフが声をかけてくる。

「あっ、それもゴミでOKですよ」

「えっ、でもこれは……」

「ほら、よく見るとここに釣り糸が絡まってるでしょう? 針がついてると危ないので、私のほうで回収させてもらいますね」

そう言って美理から海藻を受け取ったスタッフの手元を見せてもらうと、確かに透明のテグス糸のようなものが絡みついている。

「本当ですね、全然気がつかなかった……美理、よく見つけたね」

明日香が褒めると美理は得意げだった。

自然の大切さや海と人が共生していくことについて考えてもらえればと思い、美理を連れてきた明日香だったが、楽しんでゴミ拾いをしている様子を見ていると、難しいことはひとまず置いておいて、来てよかったと思った。

潮のにおいがする風が吹く。耳をすませば、穏やかに響く波の音が聞こえてくる。