「パパ、その格好……何してるの?」

深夜2時、国道沿いの工事現場。誘導灯を振る私の目に飛び込んできたのは、塾の帰りなのか、あるいは夜遊びの帰りなのか、困惑した表情で立ち尽くす16歳の娘・美咲の姿だった。

かつて、アルマーニのスーツに身を包み、六本木のタワーマンション45階から夜景を見下ろしていた男が、今は薄汚れた反射ベストを着て、埃にまみれている。

喉の奥まで出かかった言い訳は、夜風にかき消された。これが、私の「今」だった。

「年商5億」という砂上の楼閣

45歳までの私は、いわゆる「勝ち組」だった。IT系コンサルティング会社の代表として、年商は5億円を超え、港区のタワマンに月額65万円の家賃を払い、週末は高級外車でゴルフへ。妻と娘には、不自由など一切させないことが、父親としての唯一の正解だと信じて疑わなかった。

しかし、綻びは一瞬だった。

信頼していた共同経営者の横領と、主要クライアントの倒産。負債は1億2000万円。会社はあっけなく潰れた。

「大丈夫だ、すぐに立て直せる」

家族にはそう言い張ったが、現実は残酷だった。タワマンは退去を迫られ、車も時計もすべて売り払った。行き着いた先は、郊外にある家賃8万5000円、築40年の木造アパート。壁は薄く、隣の部屋のテレビの音が筒抜けになるような場所だった。