来週の注目ポイント

最後に来週の注目材料を見ていきましょう。

出所:内田氏

3月11日に米国の雇用動態調査が発表されます。労働市場関連の指標です。たとえば求人件数などが示されるものでと略してJOLTSと呼ばれています。

昨日発表された雇用統計より1月分遅く発表されるので11日に出るのは1月分のデータです。これにより先ほどご紹介した、失業者に対する求人倍率も1月分を計算できるようになります。続いて3月12日にはCPI(消費者物価指数)が発表されます。

ほかにも日本では、3月14日に連合が賃上げの第一次回答を正式発表します。速報値で6.09%という数字が出ていますが、正式回答でも6%台が確認されれば、日銀の利上げ観測が強まり、日本の長期金利上昇と円高、というセンチメントになりやすいと思います。

また、時期はまだ少し先ですが今週のヨーロッパの財政出動に続き、米国でも4.5兆ドルのトランプ減税、それから4兆ドルの債務上限引き上げを含む予算決議案が上院で審議されており、この動静にも引き続き注目です。

来週はJOLTSとCPI、この二つの指標に特に注目でしょう。両方とも予想より弱かった場合、経済支援のためより積極的な利下げが必要との見方が強まる可能性があります。

出所:内田氏

現在は年末までに3回弱の利下げが織り込まれています。たとえばこれが、4回、5回との見方に傾けば、長期金利は低下します。

通常、金利低下は株を支えますが、足元ではトランプ関税などでセンチメントが非常に悪化している状況ですから、株のサポートになるかには疑問が残ります。
逆に、両指標が予想よりも強かった場合はどうなるのか。

JOLTSの求人件数が非常に強くインフレ再燃が懸念されるような状態になれば、利下げ観測は後退するでしょう。そうなれば長期金利は上昇し、ドル高をサポート。この場合も株式市場にとっては重石となる状態が想定されます。

それぞれ結果が割れた場合は、明確な方向性が見にくくなるでしょう。あとはどちらの指標が予想から大きく上振れ、あるいは下振れしたかによって影響が出てくると思います。

ドル円相場も見ていきましょう。

 

過去1年を振り返ると、昨年7月の161.95円から9月の139円台まで下落して現在は148円台で推移しています。ここでフィボナッチ・リトレースメントと呼ばれる分析手法を使ってドル円が続落する場合の下値目途を考えてみましょう。

この手法は高値と安値から何%戻すかを分析する際に使われるのですが、その際、61.8%と76.4%という節目があります。たとえば、高値である161.95円と安値である139円台を結んだ幅の上から61.8%の水準までドル安円高が進むとすれば148円13銭ですが、今週のドル円は既にこのレベルを下回りました。

ただ、引けでは148円台を回復していますからこの61.8%押しがサポート線として機能する可能性はあるでしょう。一方でさらに下抜けした場合、さらにCPIとJOLTSがともに予想を下回れば、次の下値目標として145円を少し割ったあたりである76.4%押しの水準が意識される可能性があります。

ここまでお話しした通り、現在はユーロ高によりドルが下押しされドル安円高を引き起こしている状態です。この点を見てもここからどんどんと円高になる状況ではないと考えられます。とはいえ、来週の経済指標次第では145円程度まで下落する可能性も視野に入れておく必要があります。

ただ、投機筋の円買いポジションもそろそろ一巡してくる可能性があり、147円台で何とか踏みとどまるのではないかとも思っています。

 

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