今回のテーマは「再考・ドル資産離れ」です。5月26日週(今週)のドル円相場を振り返り、金利とドルの関係性が順相関となったり、逆相関となったりするのはどのような変化によるものか、考えます。また、先週22日に米下院を通過した税制・歳出法案にドル資産離れを誘発しかねない材料があった点についてもご説明します。

出所:内田氏

今週のドル円相場は関税で振り回されました。トランプ大統領が6月1日からEUの製品に50%の関税を課す方針を表明し、リスク回避的になると週明け早々142円台まで円高が進みました。しかし、7月9日まで延期するとの報道が出たことで下落に歯止めが掛かりました。一方、27日に植田総裁が国際カンファレンスで利上げ継続姿勢を改めて示すと142円11銭まで円高が進みました。もっとも、142円台は底堅く、日本の30年国債の利回りが低下すると円安が進みました。財務省が発行額を減額するとの思惑から長期金利が低下したのです(2ページ)。

 

また、日本製鉄によるUSスチール買収を巡る報道も円安の一因と指摘されました。2兆円以上とされる買収額について、ドル買い円売りがこれから発生すれば3~4円程度の円安が進むといった日経新聞の報道が材料視されたというものです。

ただ、すでにドル買い円売りは出ている可能性がありますし、米政府が買収を認める条件として、議決などに対して拒否権を発動することができる「黄金株」を米政府が持つことを提示した可能性が報道されました。この為、買収を巡る動きはまだ不透明な部分があります。

週後半も関税の話で為替が大きく上下しました。まず、米国の国際貿易裁判所がトランプ関税の差し止めを命じるとマーケットが一気にリスク選好的になり、ドル円も146円台に上がりました。ところが、連邦高裁がその差し止め判断を一時停止するという決定を下し、144円割れまで一気にドル円相場が反落しました。

次に今週の主要通貨の対ドル変化率をみてみましょう(3ページ)。今週はEUの関税が延期されたことから、ややリスク選好となりました。現状、ドルは金利に照らして非常に安く抑え付けられていますから、リスク選好となればドルが上がりやすくなります。また、リスク回避の円買いとは逆の動き、つまり円安も起こりやすくなる為、今週はドルが全面高となった一方で、円が一番弱くなりました。