さて、ここからは今週の「悪い金利上昇とドル安」を招いたのが、先のムーディーズによる米国の格下げではない点をみていきます。図は過去1カ月のVIX指数です。米中暫定合意の後、一気にリスク選好となり、20を下回って低下しました。その後、米国債の格下げ報道を受けてVIX指数は上昇したものの20の手前で低下に転じ、元の水準付近まで戻っています。しかし、23日にかけて一気に20を上回る水準まで上昇しています。この原因は不調に終わった米国20年物国債入札です。この結果を受けて債券相場が値下がりし、長期金利の上昇や株安、VIX指数の上昇をもたらしました。

 

株価の動きを見ても同様で、格下げの発表後、確かに一旦は株安になりましたが、その後、持ち直しています。少しずつ長期金利が上昇したことにより上値が抑えられましたが、大きく下落したのは20年国債の入札後です。

 

長期金利もムーディーズの格下げ後に上昇しましたが、その後は債券の押し目買いによって金利が一旦低下しました。そこから「トランプ減税の延長」や「債務上限の引き上げ」を盛り込んだ予算審議を横目に、財政拡張への懸念による悪い金利上昇が進み、20年国債入札の後に4.6%台まで上昇しました。もっとも、予算案が下院を通過すると、一時的にリスク選好となって、「株高・債券高・ドル高」というそれまでの市況とは不整合なトリプル高が観測されています。本来であれば、財政拡張への懸念による悪い金利上昇がテーマだっただけに、予算案の下院通過を受け、長期金利が一段と上昇していたはずです。