結局68歳で繰下げ受給をすることに

結局、正樹さんはその後68歳になるまで役員を続け、68歳になる月で老齢基礎年金と老齢厚生年金を繰下げ受給し始めました。役員退任によりそれ以降厚生年金の加入もなくなり、受給する年金は在職老齢年金制度によるカットもされることなく全額支給されることにもなります。

正樹さんの65歳時点での老齢厚生年金は、65歳受給開始(繰下げなし)、在職老齢年金制度の停止はない額だと年間160万円でした。もし、65歳で退職していたら68歳でのその繰下げの増額分が40万円程度でした。

しかし、68歳まで役員をして68歳で繰下げをした場合、実際に繰下げによって増えたのは1万5000円弱で、また、3年間(65歳から68歳まで)厚生年金に加入して厚生年金保険料を掛けたことで増えた老齢厚生年金(報酬比例部分)は12万円となります。

「同じ68歳繰下げでも、65歳で辞めると160万円+40万円で合計200万円、68歳まで3年間役員やってると160万円+1万5000円弱+12万円で合計173万円。役員やっているほうが老齢厚生年金は27万円少ないのか。けどもう仕方ない、受け取りを始めよう」と決めたのでした。

同時に繰下げをした老齢基礎年金のほか、当時65歳未満の弘枝さんがいることから配偶者加給年金も加算され、正樹さんの年金生活が始まりました。

正樹さんが亡くなり、遺族年金が支給されそうだが…

それから時は経過し、正樹さんは70歳で亡くなりました。夫の他界直後、心の整理ができない弘枝さんでしたが、弘枝さんには遺族年金が支給されるということから、その手続きのため年金事務所へ行きました。これからの生活にあたって遺族年金がいくらになりそうか気になる弘枝さん。正樹さんとの会話を思い出し、職員に尋ねます。

「夫は役員で報酬も高かったから繰下げしても増えないみたいなこと言ってたけど、夫が65歳で会社も辞めて繰下げしていたほうが私の遺族年金は多くもらえたり、何か影響とかあったりはするのですか?」

これに対し職員によると「役員報酬が高いほうが遺族年金は高く計算されますね」とのこと。遺族年金は具体的にはどういう計算になるのでしょうか。

●職員の意外な回答に驚く弘枝さん。遺族年金を受給するなら知っておきたい知識を、後編【高収入の会社役員を続けたおかげで貯蓄は3000万円に…高齢妻の老後資金を増やした夫の「ベストな選択」】で詳説します。

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