夫が亡くなった後、妻に遺族年金がいくら支給されるかで妻のその後の生活が左右されることになるでしょう。亡くなった人が自分の老齢年金を繰下げ受給していたり、働いていたりすると、遺族年金の金額に影響がでるのでしょうか。

高収入だと繰下げ効果が薄いことが判明

さかのぼること5年前、当時65歳で中堅メーカーの取締役である正樹さん(仮名、以下同)は当時60歳の専業主婦の弘枝さんと暮らしていました。大学卒業後に今の会社に就職し、60歳前で執行役員、64歳で取締役になった正樹さんは65歳以降役員報酬も月150万円受け取ることになっています。

正樹さんは働いていることから「年金はまだいらない」と考え、65歳からの老齢基礎年金と老齢厚生年金を将来繰下げ受給して増額させようと年金事務所に相談に行きました。しかし、帰宅して不満そうな様子を弘枝さんに見せます。「繰下げで年金が増えると言われているのに、自分がいざ繰り下げるとあまり増えないんだってさ」と納得がいかない様子で弘枝さんに伝えます。

何があったのか気になる弘枝さん。正樹さんによると「老齢基礎年金は影響を受けないからいいんだけど、65歳以降在職中の人が老齢厚生年金を繰下げすると、在職老齢年金制度の支給停止を除いた額に対して増額されると言われた。もらったパンフレットにもそう書いてある。なんか難しいけど、要は65歳以降給与とか役員報酬が高いと、老齢厚生年金は繰り下げてもあまり増えないとのことだ」とのことでした。

老齢基礎年金と老齢厚生年金は1カ月繰下げにつき0.7%増額されると言われていますが、高い役員報酬を受ける正樹さんの場合、老齢厚生年金の増額は0.7%より遥かに少ないことになります。

正樹さんは続けて「老齢厚生年金は、65歳で会社を辞めてる人とかなら、1カ月0.7%そのまま増えるらしい。今、収入が高くて年金はまだいらないから、繰り下げようと思ったんだけどなぁ、あんまり増えないんじゃなぁ。あの今の社長の下で役員になるといろいろ重圧もあるし、役員報酬年間1800万円って割に合うのか、どうなのか。うーん。むしろ同期の連中みたいに65歳でさっさと会社を辞めてしまったほうがよかったのか」と愚痴をこぼします。

弘枝さんは「役員までなれる人なんて少ないし、その歳でそれだけ高収入なのは恵まれてるってことじゃないの?」となだめます。