<前編のあらすじ>

5年前、当時65歳で中堅メーカーの取締役である正樹さん(仮名、以下同)は当時60歳の専業主婦の弘枝さんと暮らしていました。60歳前で執行役員、64歳で取締役になった正樹さんは65歳以降、役員報酬も月150万円受け取ることになっています。

正樹さんは働いていたため年金はまだいらないと考え、65歳からの老齢基礎年金と老齢厚生年金を将来繰下げ受給して増額させようと、年金事務所に相談に行きました。しかし、高い役員報酬を受ける正樹さんの場合、老齢厚生年金については繰下げで増額されにくいことが判明。結局、正樹さんはその後68歳になるまで役員を続け、68歳になる月で老齢基礎年金と老齢厚生年金を繰下げ受給し始めました。

その後、正樹さんは70歳で亡くなりました。弘枝さんは遺族年金が支給されると聞いて年金事務所へ行き、驚きの事実を知ることになりました。

●前編:【「65歳で会社を辞めたほうがよかったのか」年収1800万円の男性が抱いた悩み。将来、妻が受け取る遺族年金を増やすには…】

弘枝さんの年金の受け取り方

70歳で正樹さんが亡くなった当時、65歳になる弘枝さんは遺族厚生年金が受け取れます。65歳の弘枝さんは自身の老齢基礎年金と老齢厚生年金を受給し、そのうえでこの遺族厚生年金は弘枝さんの老齢厚生年金を差し引いたうえで支給されることになります。その差し引かれる前の遺族厚生年金の計算について、亡くなった正樹さんの老齢厚生年金(報酬比例部分)の4分の3で計算されることになっています。

この正樹さんの老齢厚生年金は繰下げをしても、繰下げによる増額分は含まれず、増額されない額について4分の3を掛けて算出します。つまり、繰下げをするかどうかは遺族厚生年金の額には影響を受けないことになります。

一方、65歳以降正樹さんが役員を続け厚生年金に加入した3年分についても、遺族厚生年金の計算に含まれます。3年間掛けたことで正樹さんの老齢厚生年金が年間12万円増え、その4分の3も9万円になります。差し引き前の遺族厚生年金は、160万+12万円の4分の3で年間129万円となり、もし、65歳で会社を辞めていたら160万円の4分の3で年間120万円です。正樹さんが3年間を掛けた結果、正樹さんの死後の弘枝さんの遺族厚生年金も年間9万円多くなる計算になります。高い報酬を受け取っていたために、弘枝さんへの遺族厚生年金も増えたことになります。

65歳からの弘枝さんの老齢基礎年金は年間75万円、老齢厚生年金は年間15万円とのことでした。遺族厚生年金は、先述の129万円から弘枝さんの老齢厚生年金を差し引きますので、15万円を差し引いて年間114万円となります。75万円+15万円+114万円の合計204万円で受給することになります。