遺産分割をめぐり争いが勃発

「親父の残した家を引き継ぎたい」

長男の和明さんはそう主張する。しかし、他の兄弟から反発を受ける。

次男の卓也さんは「もう古い家だし、俺たち兄弟はみんな持ち家があるんだから家の相続はリスクでしかない」と反対する。

三男の剛さんは「今決断を下さずとも、いったんは家を含めて共有の形で均等に分けるべき。その後にいろいろ決めればいい」と主張する。

しかし、兄弟会議が繰り返されるたびに、話し合いは感情的な対立へと発展する。

長男の和明さんは「お前たちは父の思いを理解していない!」と弟たちを非難する。現実主義寄りの卓也さんと剛さんもそれぞれの立場を譲らず、話し合いは平行線をたどった。

兄弟それぞれの配偶者たちが連絡を取り合い「大人なんだから」と仲裁しようとしたが、解決の糸口が見えない状況が数週間続いた。

掃除中に偶然発見された遺言書

混乱が続く中で思わぬ転機が訪れた。父親の書斎の掃除をしていたところ、剛さんが本棚の横の引き出しから一通の封筒を見つけたのだ。中には「遺言書」と明記された文書が入っていた。

遺言書は自筆証書遺言(いわゆる手書きの遺言書)として作成されており、内容は次のようなものだった。

・自宅含む全財産は売却し、そのお金を兄弟で等分すること

・金銭的に価値がつかないものはゴミとして処分すること

そして最後には「兄弟で仲良く助け合ってほしい」との父親からのメッセージが添えられていた。兄弟を代表して剛さんが兄弟の前で読み上げる。そこに異を唱えた者がいた。それは和明さんだ。

●父親の最期の願いが記された遺言書に対し、和明さんが指摘した“あること”とは? 後編【「俺は納得いかない」頑なに遺言書を疑う長男の態度が一変、3兄弟が遺産を巡る“骨肉の争い”を回避できたワケ】で詳説します。

※プライバシー保護のため、内容を一部脚色しています。